左側が送信機。1波はここにつけてカメラマイク代わり、もう1波は被写体につけておく。右側にあるのが受信機。


ケージは中央で分割できる。レンズ側はNDフィルターをつける関係で外している。ケージは樹脂製で軽量。


NiSiにはiPhone用のNDフィルターもあるが、汎用のこちらをオススメする。同社のSwiftは着脱も簡単なので屋外から屋内など移動することが多い使い方には便利。ただしバリアブルNDは画面撮影なのでモアレが出やすいので注意。

iPhone 15 Pro Maxはホワイトチタニウムだが、Momentのケースに入れている。




今気になるiPhone 15 用のケージ TILTA Khronos

昨年12月にYouTubeで「The X Gift — A Holiday Short Film Shot on iPhone 15 Pro with Tilta Khronos Ecosystem」が公開され、ガジェット好きの心をつかんだ、TILTAのKhronos。3月時点で価格と発売時期未定で今後の仕様変更もあるが、デモ機を試すことができた。フィルター装着もシステムとして用意されていくようだ。(日本代理店:ジャパンブロードキャストソリューション)



右手グリップのダイヤルでBlackmagic Cameraのフォーカス、ズーム、RECをコントロールできる。このグリップの5000mAhのバッテリーがあり、電源供給される。



アルミフレームにiPhone 15 Pro Maxをネジを使ってはめ込む。アルカスイス規格で三脚等に固定。



グリップ内にType Cのケーブルが仕込まれていてiPhoneと接続可能。グリップ上にType Cとマイク入力がある(その後の検証はVIDEO SALON.webで)。




iPhone 15からインターフェイスがUSB Type CになったことでSSDでの外部収録がやりやすくなった。今号のP.   90でサムスンのT7 Shieldで山﨑さんがレポートしているのでそちらを参照してほしい。SSDホルダーはSmallRigなど各社から用意されている。動作は検証しきれていないが、Nextorage NX-P2SEも試したいと思っているそうだ。Type Cでの接続だが、マイク入力としても使いたい場合は、分岐させるという手もあるが動作が不安定になるので避けたほうがいいとのこと。


●  Samsung Portable SSD T7 Shield



●  Nextorage NX-P2SE








Blackmagic CameraとApple Logが最強な理由

ブラックマジックデザインから2023年秋に登場したBlackmagic CameraはiPhone用アプリ。無償であり、アプリ内課金もない。



Apple Logは、iPhone 15 Proから選択可能に。



10bit Apple ProResファイルで4Kまでに対応しており、直接Blackmagic Cloudに収録することも可能。




これまでのiPhoneの色ではない!

冒頭で紹介したわたしのリールですが、すべてFilmic Proというアプリを使い、Filmic Logで撮影し、それに対応したLUTを当てて作ってきました。ところがiPhone 15 ProでApple Logが採用されて、それに対応したBlackmagic Cameraが出たことで革命が起きたと思っています。みなさん雪崩を打ってそちらに乗り換えていますし、わたしもiPhone 15 Proで撮影されたOlivia RodrigoのMVを見た時、もちろんアップルの協力で作られているわけですが、そのスキントーンの自然な美しさに驚愕しました。これは今までのiPhoneにはなかった色なんです。ぜひみなさん見ていただければと思います。実はiPhone 16が出るまで待とうと思ったのですが、これが撮れるなら、自分にとってはブレイクスルー過ぎるので、もう買ってしまおうと。

Blackmagic Cameraは、ブラックマジックデザインのシネマカメラの操作性をそのままアプリにしたものです。これまでのFilmic Proは年間サブスクリプションなのに対して、Blackmagic Cameraはなんと無料です。先日、渋谷の駅構内にポスター広告を掲出していましたから、いかにブラックマジックデザインがこのアプリに本気に取り組んでいるかが伺われます。おそらくアップルと緊密に連携しているのは間違いないでしょう。


Apple Logは本当のLog

Apple Logでアップルが本気を出してきたと思ったのは、他社のアプリのLogではできないことをやっていることです。Filmic LogではたしかにLogに近いトーンにはなっているのですが、それ以外の部分はiPhoneのカメラの特徴を引き継いでいました。自動的にエッジが強調されていたのです。これまではフィルムグレインでそのエッジを誤魔化していた部分がなきにしもあらずでした。Apple Log Profile White Paperによると、おそらく輪郭強調までOFFにしていると思います。つまりカメラメーカーがやっているLogと同じで、純正のApple Logで本来のLogからのカラーグレーディングが可能になりました。



iPhone 15 Pro Maxで制作したInstagram用の動画

通販サービスのディノスのテーブルランプのInstagam用の動画をiPhone 15 Pro Maxで制作した。夕暮れ時に夕焼けとライトの明かりを両立させることは難しいが、Apple Logのおかげで手前のものの質感と夕景を同時に収めることができた。



● 動画を見る





● 動画を見る



Apple Logの効能

画像を拡大してみても、不自然な輪郭強調感がない。おそらくLogになると輪郭強調がOFFになるという仕様になっているのだろう。
Appple Logは広い色域とダイナミックレンジを持つので、グレーディングすることで、コントラストをつけていくことができる。簡単に光沢を再現できた。グレーディングの方法は次ページで解説。








FilmConvertを利用してグレーディング

編集はDaVinci Resolveで

最近の収録では、Apple Logに設定してProRes 422 LTで撮っています。編集は以前はアドビPremiere Proだったのですが、Blacmagic Cameraを使うようになってからは、同じくブラックマジックデザインのDaVinici Resolveにしました。チームで動画を制作しているわけではないので、Blackmagic Cloudを利用することはなく、本体もしくはSSDで記録して、それを読み込んで編集しています。

グレーディングは、以前からFilmConvert with Nitrateというプラグインを愛用しています。エディットページでタイムラインに調整レイヤーを置いて、カラーページでプラグインのFilmConvertを選択して、自分の好きなフィルムのLUTを当てて調整していきます。


DaVinci ResolveでFilmConvertを適用する


❶ DaVinici Resolveのエディットページで、ビデオトラックで一番上に調整レイヤーを乗せる。これはPremiere Proでもやっていた方法。


❷❸ カラーページに切り替えてノードを足す。


❹ そのノードに対して、右側のエフェクトのライブラリーから「FilmConvert Nitrate」を選択して、ドラッグ&ドロップして適用する。


❺ タブをセッティングに切り替えるとここから設定と調整が可能。

❻ カメラはアップル〜iPhone 15 Pro〜Apple Logを選択して適用。



❼ フィルムセッティングとして、自分が好きなものを選択する。ここではKD 5213 Vis3で、フィルムサイズはSuper 16を選んだ。そこから微調整して露出、色温度、ティントなどを調整していく。


FilmConvert with Nitrate

デジタルビデオをフィルムルックにコンバートするカラーコレクションプラグイン。対応ホストアプリケーションは、Adobe(After Effects & Premiere Pro) と OFX (DaVinci Resolve)、Final Cut Pro。購入時に選択する。25,960円。(フラッシュバック)






現状のiPhone撮影の課題とは

周辺アクセサリーで解決できる部分も

ここまでiPhoneでの映像制作についてメリットを中心にご紹介してきました。しかし、本格的な映像制作に近づけるというコンセプトからすると、課題もあります。最後にその部分を指摘しておきます。

まず熱暴走です。夏の屋外などではどうしてもディスプレイの輝度を上げる必要がありますし、インタビューなどでは長回しすることがあります。おそらく熱のせいかアプリがフリーズしてしてしまったことがありました。後でデータを見たらフリーズした部分も収録されてはいましたが、もともとがカメラではないので、熱の問題はどうしてもあります。

そしてこれもカメラとの違いですが、バッテリーが着脱式ではなく内蔵されていること。しかしこのふたつに関しては、これから発売されるTILTAのKhronosでは、空冷ファンが用意され、グリップから電源が供給されるということで、解消される方法がかなり見えてきました。

残る課題としては被写界深度の深さです。一眼カメラのようなボケを使った表現はできません。これはセンサーサイズからしてもともと難しく、DOFアダプターをつけたり、外付けレンズを使うという方法もあったとしても、どうしても画質は落ちてしまいます。24mmのレンズとセンサーはわりとボケるので、人とか物に近づけることで、ある程度、背景をぼかせるので、それで可能な表現を追求したほうがいいでしょう。

同様に光学ズームレンズではないので、ズーム表現が難しいということでしょうか。デジタルズームなので画質はどうしても悪くなってしまいます。




iPhone映像制作はこれからどうなるのか?

映像の民主化

これまでもアップルはiPhoneで写真も動画もここまで撮れるよというアピールをしてきたわけですが、Apple LogとBlackmagic Cameraは、もう日常のファミリービデオという意味では完全にオーバースペックになっていると思います。そんな機材がiPhoneと無料のアプリで全人類に開放されてしまったのです。使い方さえ覚えれば、シネマカメラのようになってしまう。これはもう映像の民主化ではないでしょうか? これを中高生が使い始めて、無料のDaVinici Resolveでグレーディングし始めたら、いったいどういう映像クリエイターが生まれてくるのか楽しみです。

一方で映画の作り方も変わってくるでしょう。これまでiPhoneが使われたというのは、ワンポイントであることが多いように思います。それはシネマカメラと色やトーンを合わせるのが難しいということがありました。

しかしApple LogとBlackmagic Cameraであれば、シネマクオリティで、しかもカメラの台数を揃えることができます。これが映画制作を変えていくのではないでしょうか。2023年秋に公開されたギャレス・エドワーズ監督の『ザ・クリエイター 創造者』は、ほぼ全編ソニーのFX3を使い、しかも何台も用意していろいろなリグに装着して、使い分けていたそうです。これがARRIのカメラだったら、5台も6台も用意できません。日本の低予算映画であれば、FXの代わりにiPhoneということもあり得るかもしれません。

今回、わたしはiPhoneographerとしてご紹介いただきましたが、そのうちそういった呼び方もなくなるのではないかと思います。iPhoneを使っていることが、特別なことではなくなり、ビデオグラファーが現場にiPhoneを持っていっても誰も驚かない時代になるのではないでしょうか。